奥山保全プロジェクト

森の保全に成功してきた日本人

私たち日本人の祖先は、山の一部を利用しな がらも、「森なくして人なし」として、生物界の錠である人と動物との棲み分けを行い、クマをはじめとする大型野生鳥獣のすむ保水力抜群の豊かな森を全国に保全することに成功してきました。その根底には、生きとし生けるものへの畏敬の念がありました。

祖先たちは、集落の周りの里山では、人間が利用しやすいように自然の森の木を切って、植林を行ない荒れないように手を入れ続けた一方で、奥山は、クマをはじめとする大型野生鳥獣たちの聖域として、原則、手付かずで残したことで、広葉樹を主とする庶生的な巨木の森が全国に保全されました。この原生的な森からは清らかな水がこんこんと湧き出し、日本の国土の全生物の命と全産業を支えてきました。かつては、野生鳥獣の数は自然界の絶妙のバランスによって、安定していたと考えられます。

戦後の「拡大造林政策」によって奥山は大荒廃、深刻な問題が続出

しかし、戦後、国の主導で行われた拡大造林政策等によって、水源地・野生鳥獣の生息地として保全されていた奥山の広葉樹林は次々と伐採され、スギ・ヒノキなどの単一針葉樹だけが植え続けられました。この結果、一千万ha、日本の森林面積の42%の人工林が誕生し、現在、これらの造林地の多くは、国内林業の不振で放置され、荒廃の一途をたどっています。

荒廃した人工林は、外から見ると青々としており、何の問題もないように見えますが林内は昼でも暗く、地元の人たちが「縁の砂漠」と呼ぶように、下草も生えず表土が流れ、生き物のいない死の森と化しています。このため、山は保水力を失い各地で湧き水や井戸水が枯渇、川の水位も大幅に低下して、山崩れ、洪水などの災害を多発させるようになり、地元の人たちの生命や財産まで奪うようになってきています。また、野生鳥獣は餌場とすみかを失い、山から出てきては農作物被害を起こし、有害鳥獣として大量に駆除されており、事態は深刻化する一方であります。近年、大量に捕殺され続けている日本の森のアンブレラ種であるクマから、種の大量絶滅が始まっています。いったん絶滅させた種は、二度と戻すことができません。野生動物たちを保全しなければ豊かな森の維持形成はできません。

奥山水源の森保全協議会の設立

水源地である奥山の広葉樹林は、一度失われれば、再生には気が遠くなるような年月が必要です。百年後、千年後まで見通した森林政策、鳥獣政策の方向転換を今すぐ図らぬば、取り返しがつきません。

そこで「奥山水源の森保全協議会」を設立し、自ら水源地の森を買い取り奥山水源の森保全のためにトラスト地として未来に引渡す事としたいと思います。<エコネ11号より>